粉砕とは <2> ~粉砕の方式と粉砕機~
2019/04/20
乾式粉砕と湿式粉砕(*1)
粉砕をするときの方式として、乾式粉砕と湿式粉砕があります。
両者の違いを以下にまとめました。
乾 式 粉 砕 | 湿 式 粉 砕 |
---|---|
・空気や非活性ガス中で粉砕 ・破砕~微粒子までの粉砕が可 ・粉体粒子径は3μm以下になりにくい ⇒“3μmの壁”といわれる ・湿式に比べ低コスト |
・水などの液体中で粉砕 ・粉砕対象は微粒子・超微粒子 ・到達粒子径はナノサイズまで可 ・汚染が乾式よりも多い ・乾式に比べ高コスト |
乾式粉砕は、その特長から、幅広い分野で利用されています。砕製物のサイズはミクロンレベルまでが一般的です。中にはサブミクロンレベルまでの粉砕が可能なケースがありますが、凝集や、回収の難しさ等の課題があります。
湿式粉砕は、乾式粉砕では到達が難しいサブミクロンまでの粉砕(超微粉砕)が可能です。また、湿式粉砕では、一次粒子の粉砕のほかに解砕(=機械的解砕)や分散も含みます。近年では材料の微細化が要求されることが多く、粉砕だけでなく、解砕・分散操作も増加しています。
(※解砕(=機械的解砕)は分散の過程の一つで、凝集粒子に機械的外力を加えて粒子の新生表面の生成を殆ど伴わずにほぐし、凝集粒子の大きさを小さくすることです。)
粉砕機の種類
1台の粉砕機で微細化可能な粒径は粉砕機によって異なります。このため、数種類の粉砕機が直列に用いられることが多いようです。
また、連続粉砕とバッチ式(回分式)粉砕、乾式粉砕[dry milling (またはgrinding)]と湿式粉砕[wet milling (またはgrinding)]など粉砕の方式も多種多様です。砕料(粉砕対象物)の種類や大きさ、目標粒径、条件等を考慮し、目的にあった粉砕機を選択することが肝要です。
主な粉砕機(*1)(*2)
粉砕操作の区分 | 砕料/砕製物の大きさ(粉砕粒度) | 主な粉砕機構 | 粉砕機例 |
---|---|---|---|
粗砕 [Crushing] |
mオーダー ⇒10cm以下 |
圧縮 |
ジョークラッシャー ジャイレトリクラッシャー |
中砕 |
10cm ⇒10mm以下 |
圧縮 衝撃・せん断 圧縮・せん断 |
クラッシングロール ハンマーミル ローラーミル |
微粉砕 [Pulverization / (fine)grinding / milling] |
1mm ⇒10μm以下 |
衝撃 衝撃・摩擦 せん断・摩擦 摩擦・衝撃・圧縮 |
ジェットミル ボールミル 振動ボールミル 遊星ミル |
超微粉砕 [Ultrafine grinding] |
10μm ⇒1μm以下 |
衝撃・せん断・摩擦
摩擦・衝撃・圧縮 |
湿式媒体撹拌型粉砕機(ビーズミル、アトライターなど)
遊星ミル(条件による) |
※粉砕操作の区分は様々であり、粗破砕、中破砕、細破砕、粗粉砕、微粉砕、超微粉砕 と区分する場合もあります。
シンキーの粉砕機
シンキーには、ナノ粉砕を目的とした自転公転ナノ粉砕機 粉砕ナノ太郎(NP-100) [英語名:Nano Pulverizer NP-100] があります。
粉砕原理と特長
自転・公転ナノ粉砕機は、1㎜以下~100nm程度(解砕で数十nm)までの粉砕・解砕が可能なバッチ式の湿式粉砕機で、遊星型ボールミル[Planetary mill]やビーズミルの一種とも言えます。
スラリーとともに粉砕メディアであるボール(=ビーズともいう)を粉砕容器に入れます。粉砕容器は45°傾斜しながら、時計方向に高速で公転すると同時に反時計方向に自転します(「撹拌とは」参照)。以下の図をご参照ください。
この公転・自転と45°の粉砕容器の傾斜により、運動エネルギーを付与されたボールが、容器内壁に沿ってせりあがることなく底面外周部に集中します。同時に、容器内で対流するスラリー中の粒子がボール間に補足され、粒子にせん断力、摩擦力、衝撃力などが複合的に作用し、微細化が可能になります。
自転・公転ナノ粉砕機でできること
砕料の形状、硬度、スラリー組成等によって得られる結果は異なります。
砕料粒子径 | 砕製物粒子径 | 例 | |
---|---|---|---|
粉砕 [Pulverization / Grinding / Miiling] |
最小粒子径 <1mm |
平均粒径(一次粒径) 100 ~ 200nmまで |
医薬品 医薬品候補化合物 金属酸化物 カーボンなど |
解砕 [Disintegration] 分散 [Dispersion] |
二次凝集<1mm |
平均粒径 数十nmまで |
有機顔料 金属酸化物 カーボンなど |
自転・公転ナノ粉砕機で処理が困難、またはできない材料
これまでの実験の結果から、シンキーの自転・公転ナノ粉砕機では、処理が困難であることが分かっています。
・弾性体(樹脂、ゴム、天然素材など)
・熱に弱いもの(タンパク質、セルロースなど)
・溶媒に溶解するもの
・繊維状、薄片状(CNF、グラファイトの層剥離など)
・展延性のもの(金属単体)
(*1) 坂本宏: “破砕・粉砕”資源と素材 Vol. 113 No.12 899-903 (1985)
(*2) 粉体工学概論 52-57 日本粉体工業技術協会
(*3) 神田良照:“粉砕の研究と技術史に関する調査” 素材物性学雑誌 第9巻 第2号 87-110(1996)
(*4) 井上外志雄: “何が粉砕効率の向上に寄与するか?”粉体工学会誌 Vol. 22 No.6 71-76 (1985)
(*5) BSI 生物化学研究所HP 「肥料化工学」-粉砕
(*6) 中山勉: 超微粒子・ナノ粒子をつくるビーズミル P23-28、P29、P34-35
(*7) 粉体用語ポケットブック 日本粉体工業技術協会