ユーザーインタビュー~富山県立大学 真田教授、永田客員教授~
2017/08/30
皆様の中には、「放熱材料」「セルロースナノファイバー」「自己修復」といった単語を聞くと、思わず反応してしまう方がいらっしゃるのではないでしょうか?そんな話題の材料を研究されている2人の先生にお話を伺ってきました。共にメーカー勤務経験もあり、企業と大学両方の事情をご存知のお2人。興味深い話が聞けました。
1.あわとり練太郎との出会い
日頃から弊社製品をご愛用いただき、また、昨年は弊社主催の4社共同技術セミナーにもご参加いただきありがとうございました。こちらの研究室では、「あわとり練太郎」のAR-250※とARE-310をお使いいただいておりますが、弊社製品との最初の出会いはどのような感じだったのでしょうか?
※AR-250 : 販売終了(後継機種 ARE-310)
真田先生:この大学に赴任したばかりの頃、富山県工業技術センターで見慣れない装置があるのを目にし、フィラーの分散装置としてご紹介いただきました。フィラー系は、プロペラがあると掃除が大変ですし、高粘度になった時に混ぜにくいのですが、この装置を使うとそういった問題が解消できました。
永田先生:「あわとり練太郎」はネーミングが印象に残りましたね(笑)。私はフィラーのコンポジット(複合材料)の研究をずっとやっていまして、関西大学の越智光一先生と永年一緒に仕事をさせていただいたのですが、越智先生の研究室でも「あわとり練太郎」を使用されていました。それから当時、関西の某大手企業さんとエポキシ系のコンポジットの研究をやったのですが、そこの研究所でも「あわとり練太郎」が使われてました。あと、展示会等でも見る機会が多かったですね。
2.現在、「あわとり練太郎」は研究の中で、どういった用途でお使いいただいているのでしょうか?
真田先生:セラミックスの粒子をエポキシ樹脂の中に混ぜる用途ですね。今の研究テーマの一つは、熱伝導率の低い樹脂に、(熱伝導率の高い)セラミックスの粒子を加えて、熱伝導率の高い樹脂に変えるというコンポジットの研究になります。
永田先生:熱伝導性コンポジットは、今、話題の材料ですからね。
3.主にどういったものに使われるのでしょうか?
真田先生:電子機器の放熱材料として使われます。電気は通さないで熱だけ逃がしたい部分、たとえば筐体とか、半導体周り、基板など、あらゆる部分に使われています。
永田先生:特に今、自動車分野のEV・HEVにおいて、リチウム電池とモーターの組み合わせで大電流を取り扱うため、半導体周りで発熱制御、熱のマネージメントが非常に重要な技術となっています。今、「放熱」というのは第3ブームくらいですね。初期が1990年頃でしょうか。
真田先生:そうですね。
永田先生:日本で電子分野がどんどん伸びていった頃から半導体の熱暴走を防ぐために「放熱」という分野ができ上がったのが第1世代ですね。その後、半導体が細線化あるいは多層化することによって第2ブームが起こり、今は自動車の大電流に対する制御で第3ブームと言えると思います。半導体の性質が変わり、大電流になったことにより、今まで以上に熱が発生してきていますので、第3ブームの現在は皆さん本当に真剣に取り組んでいらっしゃいますね。
4.なるほど。熱の問題はますます重要になってきているのですね。ところで他にセルロースナノファイバーの研究もされていますね。
永田先生:はい。元々、セルロースは水のほうが圧倒的に多く、80~90%が水分で、繊維が10%前後という世界なのですが、我々、富山県立大学のグループは、水が3%以下の、ほとんど固形の状態で分散するという技術を完成させました。実験的にはもう出来上がっているので、それを様々な民間企業と共同研究しようという段階にきています。化学メーカーや、製品として実用化を目指している複数の企業が手を挙げてくださっています。セルロースナノファイバー(CNF)は、東レさんが始めた炭素繊維同様、この10年程、国を挙げて注力している材料の一つですが、CNFも得意技術を持ち寄ってオールジャパンで育てていければいいですね。
5.期待しています。その他の研究テーマとしてはどのようなものが挙げられますか?
真田先生:自己修復性を有するポリマー系コンポジットの研究をしています。マイクロカプセルという自己修復性を付与する修復剤の入ったものをエポキシ樹脂に混ぜるのですが、混ぜる速度が速いとマイクロカプセルが割れてしまうので、回転速度が変えられる「あわとり練太郎ARE-310」を購入しました。
永田先生:現在の研究をまとめると、①セルロースも含めたナノ材料とポリマーの複合化、②(真田先生が手がけている)自己修復技術、そして③トレンドの放熱材料、の3本柱になります。この3つだけでも様々な分野から注目していただき、たくさんの方が共同研究のためにはるばる富山まで来てくださいます。東京からだと実はすごく便利なのですけどね。私も毎週東京に行っています(笑)。
6.あとがき
現在は、真空付きのあわとり練太郎や、ナノ分散機(分散ナノ太郎 PR-1)にもご興味をお持ちの真田先生と永田先生。今後も研究から目が離せません。真田先生はこの4月に教授になられ、益々のご活躍が期待されます。お2人はメーカー勤務時代からのお付き合いとのことで、インタビュー中も仲の良さが伝わってきました。カメラを向けると「小顔に撮ってください。」「では、私は色白にお願いします。」と笑わせてくださいました。
本日は貴重なお話、ありがとうございました。
<真田 和昭 教授 略歴>
1994年 東北大学工学部材料加工学科卒
1996年 東北大学大学院工学研究科材料加工学専攻修士課程修了
1999年 東北大学大学院工学研究科材料加工学専攻博士課程修了
1999年 株式会社日立製作所 日立研究所
2003年 富山県立大学工学部講師
2009年 富山県立大学工学部准教授
2017年 富山県立大学工学部教授
■受賞歴
日本金属学会・日本鉄鋼協会奨学賞(1994.3)、ICMC Student Travel Assistance Award(1995.7)、日本機械学会北陸信越支部 支部賞(優秀講演賞)(2010.4)を受賞。
<永田 員也 客員教授 略歴>
1979年 神戸大学工学部工業化学科卒、同大学院工学研究科修了、同大学院自然科学研究科博士課程修了(理学博士)
1981年 昭和電工株式会社 川崎樹脂研究所
1990年 岡山県工業技術センター
2008年 旭化成ケミカルズ株式会社 樹脂総合研究所 特級高度専門職
現在 富山県立大学 工学部 機械システム工学科 客員教授 (文部科学省招聘研究員)
信州大学医学部バイオメディカル研究所 特任教授
一貫して「フィラー充填プラスチック・ゴム複合材料、ポリマーアロイに関する研究、異種材料接着に関する研究、医療用高分子材料に関する研究」に従事。
■受賞歴
文部科学大臣「科学技術賞技術部門」、日本接着学会賞、日本接着学会論文賞、日本ゴム協会論文賞、金属学会技術開発賞ほか6件を受賞。
さわやかな風が吹き、とても気持ちの良い富山県立大学のキャンパス