灌流可能な微小血管の自己組織化のためのマイクロ流体プラットフォーム
2018/05/30
- Colette Bichsel1,2, Sean Hall3,4,
- Ralph Schmid3, Olivier Guenat1,2,3,
- Thomas Geiser2
1 ARTORG Center for Biomedical Engineering Research, University of Bern, Bern, Switzerland
2 Pulmonary Medicine Division, University Hospital of Bern, Bern, Switzerland
3 Thoracic Surgery Division, University Hospital of Bern, Bern, Switzerland
4 Department of Clinical Research, University of Bern, Bern, Switzerland
本プロジェクトの目的は、微小血管の形成および維持のためのプラットフォームを開発することにある。このプラットフォームは、健康と疾患における血管動態を理解するために、生理学的に適切な微小血管系のin vitroモデルとして使用されるものである。チップ上で成長した微小血管は機能的であり、また、規定された圧力降下で外側から灌流することが可能である1。
ハイドロゲルおよび細胞の流路とチャンバーを定めるために、ソフトリソグラフィを使用する。簡潔に言えば、まず、シリコンウェハー上にネガ型レジスト(SU-8)を100μmの厚みでスピンコートし、それをフォトリソグラフィにより構造化する(図1)。
図1:SU8マイクロ構造を有するシリコンウェハーの図。
次に、このウェハーをポリジメチルシロキサン(PDMS)の型として使用する。PDMSをウェハー上に注ぎ、硬化させ、切断し、最終的にはスライドガラスに接着させる(図2)。
図2:導管チャンバーは、フィブリンマトリックスに懸濁された内皮細胞および線維芽細胞で満たされている。アスタリスクはゲルインレットを示している。
チップ製造中の重要な課題の1つは、すべてのSU8マイクロ構造を硬化前のPDMSで完全に充填することである。PDMSにはしばしば気泡が閉じ込められることがあり、これは避けなければならない。そのために、この過程ではPDMSの撹拌と脱泡が同時に可能なシンキーミキサー(※)を利用したため問題はなかった。
次に、得られたチップを滅菌し、定められた区画(直径2mm、高さ100μmのチャンバー)で細胞を培養するために使用する。フィブリンハイドロゲル中の内皮細胞および線維芽細胞をこれらの区画に充填し、流路に細胞培養液を充填する。1週間以内に、灌流可能な微小血管構造ができあがる(図3)。1
図3:RFPで標識されたVeraVec内皮細胞が自己組織化により3D微小血管構造を形成している。スケールバー:1 mm
(※)使用されたシンキーミキサーは、CE対応のTHINKY MIXER ARE-250 CEです。
日本国内での同型モデルは、あわとり練太郎(ARE-310)となりますが、より微細な泡を除去したい場合には、あわとり練太郎(ARV-310)のご使用をお勧めします。
1 Bichsel et al. (2015) Tissue Eng. A,21:2166-2176