容器・アダプター開発者が語る(前編) 「特注品製作の極意」
2014/10/01
※本記事は過去に配信したメールマガジンの内容です。内容は配信当時のものとなります。
様々な分野で導入いただいているシンキーの自転・公転ミキサーですが、高評価の理由はミキサー本体だけではありません。シンキーでは、お客さまの課題に合わせて、オリジナルの「容器・アダプター」を開発することで、きめ細かな対応を行っています。
多種多様なお客さまの課題をクリアすることができるのは、開発者の長年の経験やノウハウあってのものです。容器・アダプター開発のキーマンに特注品製作の極意を聞きました。
開発部の顧問を務める笈川正宏。自転・公転ミキサーの初期開発から携わり、現在は容器・アダプターの開発責任者を務めています。
Contents
1.どのような経緯で容器やアダプターの開発に携わるようになったのか?
シンキーのミキサーの出発点は、「アルギン酸」という、歯医者さんで歯型をとるための材料を混ぜる専用機でした。その頃は材料がそれに限られていたので問題がなかったのですが、自転・公転ミキサーの性能を知った方から「こんな材料は混ぜられないの?」というリクエストを次々にいただくようになり、材料や用途に合わせて、その都度改良を進めていきました。
多種多様な材料に対応するには、1台の汎用機では限界があります。かと言って、用途に合わせて本体をカスタマイズしていたのでは、コストも時間もかかってしまう。そこで、本体に直接材料を入れる容器やアダプターを工夫することで、使える用途の幅を広げられないかと思ったわけです。
2.多種多様な材料というのは?
お客さまが使われている材料というのは本当に様々です。粘度、温度、撹拌時間、回転速度、使用頻度、お客さまごとに違う材料や条件の下で使われています。リクエストの多いアダプターは製品化していて、それが約60種類。それで「混ぜる材料に特殊性はないけれど、高温の状態で混ぜたい」とか、「シリンジの中で混ぜたい」とか、一定の用途には対応できるのですが、それでもすべての課題を解決できるわけではありません。納品後にお客さまの現場に伺うと、「より粘性の高い材料を混ぜたい」「温度の低い状態を保ちたい」「特殊な形の容器内で混ぜたい」とか、いろいろな相談を持ちかけられました。そこで、オリジナルのアダプター(特注品)の開発を承るようになったのです。特注品はとてもご要望が多く、今では週に1つのペースで設計しています。「最初は製品化されたアダプターで代用していたけれど、もっと使い勝手を良くしたいので」と特注アダプターを発注くださるお客さまもたくさんいらっしゃいます。
3.特注品はどのように設計するのか?
一番重要なのは、お客さまへのヒアリングですね。どんな環境で、どんな材料を混ぜて、混ぜたものをどう使うのか。その過程でどこに課題があるのかを根本から把握しないと、満足いただける物は作れません。メーカーさんはもちろん、大学や研究機関など、幅広い分野でシンキーのミキサーは使われているので、それぞれの高度な専門分野を理解するのは至難の業です。それでも、できるだけ深く理解できるように、事前に情報を集めてある程度勉強してからヒアリングに臨んでいます。
4.課題を正確に理解できたら、次に設計?
そうです。正確に課題とリクエストを理解さえすれば、解決方法が自然と頭に浮かんできて、ほぼ設計ができあがるんです。もう10年以上も容器やアダプターの開発をしていますから、解決方法の引き出しはいろいろあります(笑)
5.実現が不可能だと思うことは?
技術者なので、「できない」とは言わないようにしています(笑)。とはいえ、一筋縄ではいかないケースもあります。そういう時は常にその課題が頭にあるから、新幹線の移動中とか娘の買い物に付き合っている時とかに、ふとアイデアが出てくるものなんですね。いつも頭の片隅で課題に向き合っている。私にとって設計は、机に向かって考えるということではないんです。
6.容器やアダプターの開発時に特に気をつけていることは?
色々ありますが、例えば容器自体の重さですね。ミキサー内に入れられる材料の重量には制限がありますから、容器そのものが重いと、入れられる材料が少なくなってしまいます。とはいえ、400Gもの重力がかかるので、耐久性は確保しなければいけない。そのせめぎ合いですね。だからF1の車とか、飛行機に使われている、最先端の材料には常に注目しています。
それから繰り返しになりますが、やはりお客さまの課題をしっかり把握すること。我々の製品が現場でどのように使われていて、どんなことが課題になっているのか。フィードバックを得られるチャンスでありアイデアの宝庫でもあります。お客さまの課題は自分の課題と捉えて、お客さまと一緒に解決していければと思っています。