練太郎で作った石けんは主婦の味方?! ~天ぷら油で石けん作ってみました~
2019/10/29
廃油石けん作りに挑戦 ARE-310編
今回はあわとり練太郎 ARE-310を使って廃油石けん作りに挑戦です。
揚げ物などの廃食用油を使って、石けんができることはご存知でしょうか。廃油ゴミも減らせてエコにもなるのでリサイクル石けんとも呼ばれています。
材料は廃食用油とNaOH(苛性ソーダ)と水だけです。この3つを決まった分量でよーく混ぜるだけで、ひどい汚れの洗濯に、食器洗いにと大活躍の石けんが作れます。
作り方
材料
実験1 | 実験2 | |
---|---|---|
廃食用油 | 100ml | 100ml |
水 | 20ml | 30ml |
NaOH(苛性ソーダフレーク) | 12g | 15g |
手順
1.廃油100mlを300ml容器に入れる
2.水(分量)を牛乳パックに入れる
3.NaOH(分量)を2の水に入れ、蓋を閉めて混ぜる(※熱とガスがでるので注意!)
4.フレーク状のものがなくなったら(透明になる)1の油に入れる
5.よく混ぜる(手撹拌/ARE-310) → シチュー状になったら終了
6.風通しのよいところで乾燥させる。(1ヶ月以上)
実験1(①手撹拌/②ARE-310での撹拌)
廃食用油にNaOH水溶液を混ぜるとすぐに鹸化(けんか)がはじまり、粘度が出てきます。
サラッとしたシチュー状になるまで、①手撹拌では40分、②ARE-310では13分撹拌しました。①②ともスタート時よりは白濁しましたが、トレース(石鹸生地に線がかける状態)までの粘度にはなりませんでした。
今回使用した300ml容器の耐熱温度は80℃です。NaOHは水に溶かす際に激しく発熱するため(手順3で70℃超)、かつARE-310は回転することで材料の温度があがることを考慮して、NaOH水溶液の温度が少し落ち着いてから混ぜました。撹拌前が37℃、60秒ごとに中身の状態を確認がてら温度を測りました。予想と心配に反して温度の上昇は少なく、計るたびに30℃台とほぼ横ばいでした。
実験1 左:油のみ 中:油とNaOH水溶液の混ぜはじめ 右:撹拌終了
実験2(③手撹拌/④ARE-310での撹拌) ― NaOHを増量 ―
実験1で思うような粘度に達しなかったため、実験2ではNaOHの量を増やしました。また、撹拌中にも容器の耐熱温度を超えないことが確認できたので、手順4で溶け終わったNaOH水溶液を温度の高いまま、すぐに油に混ぜて撹拌を始めました。
実験2では1よりも早い段階で粘度がアップし、③手撹拌で15分、④ARE-310では10分でシチュー状になりました。
実験2 左④ARE-310、右③手撹拌 (表面にトレースが出ました)
今回の実験では使用した容器の耐熱温度に不安があったため、温度確認が必要でした。温度測定はマルチセンサーにお任せで、温度確認の工程をカットできました。撹拌中の温度がリアルタイムでわかるのでグラフの緩やかな勾配をみているとこのまま撹拌していていいんだという安心感にも包まれました。
撹拌中の材料の温度変化が気になる方は是非、マルチセンサーをお試しください。マルチセンサーはリアルタイムで温度変化が目に見えて安心です
(左:実験1/右:実験2)
実験結果 〜容器に入れたまま3ヶ月乾燥〜
非常口の踊り場(屋外)で容器に入れたまま乾燥させました。表面に若干埃や小さなゴミなどが付いてしまいましたが、撹拌後のシチュー状からはだいぶ変化し、固くなりました。
1.表面の様子
撹拌時間 | 表面の様子 | ||
---|---|---|---|
①実験1 手撹拌 |
40(分) | 廃食用油の色素?が斑点状に見える | 指で押してみると形が残ってしまうほど 柔らかい(粘土のような硬さ) |
②実験1 ARE-310 |
13(分) | 廃食用油の色素?が斑点状に見える | 指で押しても硬く変形しない。 スベスベしている |
③実験2 手撹拌 |
15(分) | 白い | 指で押しても硬く変形しない。 スベスベしている |
④実験2 ARE-310 |
10(分) | ③より白い | 指で押しても硬く変形しない。 スベスベしている |
2.断面の様子
固まっていてうまく容器から取り出せなかったため、中身を確認するため容器ごとノコギリで二つに切りました。
表面が斑点状になっていたもの①②も、白くなっていたもの③④も2層になっていて、中身は全体的に均一に黄色で4種ともあまり色の変化はありませんでした。カマンベールチーズのようで美味しそうという声も…。
3.硬さの比較
容器から出しました。①は表面だけでなく全体的にも柔らかく、型から出す時点でもかなり変形してしまいました。②③④の面は硬くてスベスベして若干廃油の匂いはあるものの、撹拌直後のシチュー状の液体感は面影もなく、全体的にしっかり石けんになっていました。
さらに断面に割り箸を刺して硬さを確認しました。
断面の様子
硬さの結果
②実験1(ARE-310)>④実験2(ARE-310)>③実験2(手撹拌)>>①実験1(手撹拌)
石けん作り=鹸化反応とARE-310の関係について
石けんは鹸化(けんか)という反応で作られます。
油脂(トリグリセリド)にアルカリ(NaOH)と水を加えることで加水分解し、脂肪酸とグリセリンになり、生成された脂肪酸とナトリウムから脂肪酸ナトリウム塩(石けん)が出来ます。
鹸化反応を進めるための3つの要因と今回の実験結果の考察
1.撹拌
鹸化反応は油とNaOH水溶液の界面で起こるため、油の中にNaOH水溶液が撹拌、分散することで界面の面積が増えるとより反応が進みます。また、反応でできた石鹸膜が邪魔になると反応が進まなくなるので、撹拌で界面の更新をする必要があります。
↓
実験1、2とも手撹拌よりもARE-310で撹拌した方が硬い(鹸化がより進んでいる)結果になりました。②実験1(ARE-310)が④実験2(ARE-310)よりも硬くなったのは、水分量の差かと思います。
2.温度
温度が高いほど分子の運動が活発になるために反応の確率が上がります。また、温度が高いほど界面張力が小さくなり、油と水が混ざりやすくなります。
実験1では容器の耐熱温度を気にしすぎて、熱いNaOH水溶液をすぐに油へ入れなかったため、30℃台での撹拌で反応活性が低くなってしまったと考えられます。同じ濃度の実験ではないので予測になりますが、実験2では40℃台での撹拌だったため、温度という要因も関係し、早い段階で実験1ではきれいに出なかったトレースを出すことができたと考えられます。
3.乳化剤
界面活性剤が界面の反応をより活性化します。最初から界面活性剤を加えることによって、より鹸化を促進することも可能です。鹸化反応で発生した石けんが界面活性剤そのものなので、撹拌で石けんがミセルを形成、乳化することで液中に安定した界面が増え、鹸化反応はより進むようになります。
↓
今回の実験では乳化剤を入れなくてもARE-310のパワフルな撹拌で機械乳化も行われるため、より鹸化反応が進む結果に繋がっていると考えられます。
やっぱり撹拌にはあわとり練太郎!!
実験1の手撹拌のものは3ヶ月たっても柔らかく、石けんのなりそこない感があったので、手で混ぜるのとは違う! ARE-310で撹拌して成功! という結果が紹介できそうで一安心…。反面、実験2の2つの表面の見た目はあまり変わらず、実験1よりも2の方が石けんになっていたので撹拌よりもNaOHの多さが勝るのか…と予想していました。
しかし、断面に割り箸を刺した時に手撹拌は柔らかく、ARE-310で撹拌したものは硬くと、硬さに明らかな差があり「撹拌にはあわとり練太郎!」という結果が出て嬉しかったです。
石けん作り(鹸化)についてもあわとり練太郎の特性が活かされることがわかりました。手撹拌では未反応部分が多くなるのは他の材料と同じようです。もっと撹拌時間を長くすることでトレースの違いが出ただろうか…などなど追実験したいところもありますが、実は今回は大型機での石けん作りのプレ実験です。
次回、大型機編を準備中です。ご期待ください。
おまけ 手洗い編
できあがった石けんで手を洗ってみました。
①は柔らかいので溶ける量もスピードも早く大きな泡が立ちました。②③④は①よりはキメの細かな泡が立ちました。洗浄後は手の油分がガッととられてガサガサになってしまい、どの石けんも洗浄力は強そうです。手洗い実験後は1時間ごとにハンドクリームを塗りたくなる脱脂力でした! 使用時にはゴム手袋を推奨します。