撹拌熱にお困りではないですか?
2022/02/22
※今回の内容は、過去に実施したウェブセミナーの内容を再構成したものです。
あわとり練太郎は、装置内の回転体が時計回りに回転(公転)し、その回転軌道上で材料を入れた容器が反時計回りに回転(自転)することにより、容器内に複雑な流動を発生させる事で、材料の撹拌と脱泡を同時に効率よく行うことを可能としていますが、セミナーにご参加いただいたお客様から、
「材料が触れないくらいに高温になるのですが、防ぐ方法は?」
「材料の温度を(できるだけ)上げずに混ぜたいんだけど。」
「撹拌中の材料の温度を確認・管理することはできないか。」
というご質問をよくいただきます。本ページでは、あわとり練太郎の(撹拌)熱対策にスポットを当てて、熱対策や関連製品のご紹介をいたします。
なぜ発熱するのか?
容器内の材料は、運転中は常に流動しています。回転速度の高速・低速問わず、その運動エネルギーが熱エネルギーに置き換えられて温度は上昇します。これは、1843年ジェームズ・プレスコット・ジュールによる「熱の仕事等量」の実験により、「機械的力が消費される時には、いつでもそれに厳密に等しい量の熱が得られる」に由来しています。
発熱する事でどんな問題があるのでしょうか?
発熱(温度)による材料へのダメージは以下のような事があげられます。
・低融点化合物の場合、撹拌熱のダメージによる結晶構造の変化
・エポキシ樹脂接着剤の場合、過剰な温度上昇はゲル化の起因となり可使時間(ポットライフ)が短くなる
・組成の変化、成分の揮発など
他にも、最終製品への影響も考えられます。
ご使用になる材料によっては、発熱する事が必ずしも問題になるとは限りませんが、”熱”に課題をお持ちのお客様は、温度をうまくコントロール(抑制)する事で業務効率化につながるかもしれません。
温度制御のファクター
では、温度を抑制するには、どういう点に注意して、何から始めると良いのでしょうか。
1. 容器、内容量―適切な容器選択と内容量の最適化
2. レシピ設定―運転時の回転数と運転時間のコントロール
3. 温度を知る―温度のモニタリング
4. 調温―冷却アダプター、装置内の排熱
調温―冷却アダプターについては、過去のメールマガジンでもご紹介させていただいた記事をご参考ください。
シンキー製品に欠かせない容器・アダプターをご紹介
適切な容器選択と内容量の最適化
こちらのグラフは、ARE-310で同じ量の水を、容器サイズ変えて、公転2000回転、5分間運転した際の温度推移をプロットしたものです。内容物の性状も量も同様でも、容器底面積、容器中心点からの半径の違いから撹拌力に差が出ることを示唆しています。
続いてこちらのグラフは、300ml標準容器で内容量を可変させ、さらに回転数を2,000rpmと1,200rpmに可変させた時の結果をプロットしたものです。回転数を2,000rpmに設定した場合、内容量の増加に伴って温度上昇は顕著です。ジュールの実験同様撹拌熱の熱媒体となる内容量が多いため、同じ回転数でも量目の違いによる熱量には差が出ます。
練太郎にあった容量の目安とは
容器に合わせて材料の量目を調節するという事は非常に重要です。良い流動を生むためには、容器容量に合った適正量があります。下記の画像は、「それぞれの容器でどれくらいの容量まで撹拌できるか」を示したものになります。材料を入れた容器をカップホルダーにセットし、図の赤いライン(回転の中心)を超えない分量が目安です。
また、アダプターを使用すれば、「少ない容量を撹拌」することも可能です。前述の容器・アダプターの紹介ページ(ごく少量の材料撹拌に)をご参照ください。
レシピ設定―温度制御のためのレシピコントロール
レシピ設定と2つのモード
あわとり練太郎には、2つのモードが搭載されています。スタンダードモード(STD)は、回転数が固定で運転時間を設定する事ができ、ステップモード(STEP)では、回転数と運転時間を設定し、STEP(最大5STEP)ごとに5種類※の回転数と時間を設定する事ができます。材料によって、適した回転数や運転時間は異なりますが、2つのモードを組み合わせレシピ設定する事で過度な発熱を抑える事が可能です。
※ARE-310の場合、機種ごとの設定方法は取扱説明書等でご確認ください。
粘度の違いによる発熱差
次に、容器サイズ(300ml、150ml)と容量(70gと150g)は同じ条件で、材料を変化(水とエポキシ)させた場合の温度変化をプロットします。粘度が違えば発熱量が変わり、また、粘度が高い材料は、熱の遷移に時間が掛かるため蓄熱しやすくなります。
粘度に対する考え方
この表は、粘度に対する回転数と運転時間の考え方で、粘度が低い材料は、高回転で短時間の運転、粘度が高い材料は、低回転で運転時間を長めに設定するという事を表しています。(材料や気温等の諸条件によっても、撹拌熱は変化しますのでご注意ください。)
温度を知る―温度制御をするためには温度のモニタリングが重要
マルチセンサーとは
非接触放射温度計により、撹拌中の材料温度を計測する事ができます。また、パソコンとBluetooth®接続で無線接続し、LOGを保存する事が可能です。容器の蓋部分を取り換えるだけで簡単に使用する事が可能です。
マルチセンサーでできる事
・装置ドアを閉めたまま、運転を止める事なく温度測定が可能。
・1秒ごとに材料温度を測定、LOG保存(CSV出力可)。
・150ml、300ml、550ml容器に対応。
マルチセンサーの用途
・材料温度の制御目安(現場作業管理)
・撹拌プロセス管理(品質管理目的)
・材料性状(粘度差)による撹拌熱の確認
マルチセンサーデモ、オンライン相談のご案内
マルチセンサーのデモ、オンライン相談を承ります。下記のフォームからお問い合せください。資料ダウンロードも受け付けております。
マルチセンサーは、150ml、300ml、550mlの容器サイズに対応しております。